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ポジティヴヘルス ー “健康”は、誰のもの?

  • 執筆者の写真: japanpositivehealt
    japanpositivehealt
  • 2021年11月9日
  • 読了時間: 3分

更新日:3月5日


在宅医療をやっていると、様々な患者に出会う。


病院で出会う患者も様々だが、病気が主語になりやすい病院では、病気の種類によってまず患者は分類されまとめられる。

でも、生活が主語の在宅医療の現場では、同じ病気だから、という理由で同じように扱われることはない。当たり前だが、1人として同じ人はいないのだ。まとめようがないから、その様々さが際立つ。


同じ病気でも想いは違う。送ってきた人生、送りたい人生は違う。大切なものも、やりたいことも、病気への向き合い方も違う。

だからこそ、「まずはその人のことを知ろう」、という気持ちで患者さんに出会う。そこが、僕が在宅医療が好きな理由の大きなひとつ。


病気や障害を持っていること=不健康、ではない!


そんな在宅医療の現場では、周囲から見たら、重い疾患があり、絶対になりたくないような病気を持っているのに、「健康的な人」と出会うことがある。


40代でALS、筋萎縮性側索硬化症のオトノさん。


オトノさんは、病気が進行し首から下は自由に動かすことができない。それでも、マンションの1室で一人暮らしをしている。

寝たきり、はカッコ悪い。という理由と、横になっていて寝返りをうてない方が体が痛い、という理由で、座りきりをしている。夜中も座って寝るのだ。

ヘルパーさんにサポートしてもらって、お酒も飲むし、タバコも吸う。

若い時はレースにも出場していたほどの車好きの彼の部屋は、車であふれている。ミニカー、カーパーツ、レースのビデオ。

好きなものに囲まれて、自分のペースで暮らしている。ヘルパーさんにセットしてもらって、見たいテレビ番組が自動でつくので、それを見て過ごしている。

体調が悪い時、入院を勧めたこともあった。

決まって彼は、「部屋にあるミニカーを全部持って行って眺められて、お酒も飲めてタバコも吸えて、夜中でも好きなテレビを見れる病院なら、行ってやってもいいよ」と言った。

僕はもう、入院を勧めるのはやめた。

ある日、21時頃に診療という名の雑談を終えて帰ろうとすると、

「俺は今から、好きなテレビを見て夜更かしするよ。センセは何するの?」

「あ、今日は電話当番だから、お酒も飲めないし、仕事するかな」

「はは。センセは、不健康な生活してるなぁ」と笑った。


首から下が動かなくて、食事もトイレもタバコも誰かの手を借りているけど、

自分のやりたいことを選んで、決めている彼と話していると

「健康的だなぁ」と思うことが時々あった。


「医学部で学んだ「健康」ってなんだっけ。病気じゃないと健康なんだっけなぁ」なんて思っていた。


オトノさんを囲んでいる医療法人社団オレンジ・オレンジホームケアクリニックスタッフ(当時)


WHOの定義では、健康とは、

単に疾病や虚弱状態でないことではなく、身体的・精神的・社会的にも完全に良好であることと定められている。


体も、心も、取り巻く環境も、完全に良好という状態。よく分からない。 となると、”健康”ってなんだ?健康って誰が決めるんだろうか。



オトノさんの大切な車は、壊れていたけど駐車場に停まっていた。みんなで直して、レース場でもう一度走らせよう、というプロジェクト。


サーキット場を借りて、レーサーに運転してもらった。爆音で駆け抜ける車にワーキャー盛り上がるオレンジスタッフを見ながら「みんなが楽しんでくれるのが楽しい」とオトノさんが呟いていた。


書き手:医療法人社団オレンジ、ポジティヴヘルスジャパン 紅谷

再編集:2026.3



 
 
 

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